体内に血液を送れなくなった状態を「心不全」といいます。そして心不全は、心臓の機能低下によって起こります。
心不全について
まず、心不全という病気自体はありません。様々な原因によって心臓の機能が低下すると体内に十分な血液が送られなくなり、その状態のことを心不全といいます。私たちが健康的に過ごすためには心臓の良好な動きが不可欠ですが、この動きに問題が起きると、いろいろな不調が起こりやすくなります。
1.心不全になるとどうなる?:
心不全になると、「体に十分な血液を送れない」「体内で血液循環がスムーズに行われない」という問題が起こります。
体に十分な血液を送れなければ、息切れや運動能力の低下が起こり、日常的に息苦しさや疲れを感じやすくなります。手足の冷えや顔色の悪さも目立つようになります。また、体内で血液循環が行われなくなれば、臓器に水がたまり、むくみなどの症状があらわれます。酸欠状態の原因にもなり、動いていなくても呼吸困難が引き起こされることもありうる、非常に危険な状態です。兆候がほとんどなくても高血圧の原因だけで、心不全を突如発症することも多く、高血圧の人は特に気をつけるべきです。
<左心不全か、右心不全か>
私たちの心臓には4つの部屋があり、それぞれ機能を持っています。左側の部屋に問題が起こるタイプが「左心不全、」右側に問題が起こるタイプが「右心不全」です。しかし、多くの場合には、両方に問題が起こります。
<急性か慢性か>
数時間から数日の間に発症する「急性心不全」、月から年単位で慢性的に発症している「慢性心不全」があります。慢性心不全から急激に症状が悪化するケースもあるため、注意が必要です。
このような症状がありましたら、ぜひご相談ください
- 「日常生活で息苦しく感じることがある」
- 「ちょっと運動しただけでも息切れや動悸がする」
- 「階段や急な坂を歩いているわけではないのに、呼吸困難になる」
- 「安静にしていても苦しくなる」
- 「眠れないほど息苦しい」
- 「体がひどくむくむ」
このような症状に心当たりがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。心不全の症状は自覚しにくいケースが少なくありませんが、症状が進行するにつれて体全体に負担がかかるようになります。少しの異変でも見逃さず、適切な治療と検査、対応を受けることが何よりも大事です。
心不全の原因
心不全の原因には数多くのものがありますが、主に「心臓を原因とする場合」と「心臓以外を原因とする場合」で分かれます。それぞれが複合することが多く、高血圧は特に多いです。
1.心臓を原因とする場合:
- ・心筋症
- ・心筋炎
- ・心臓弁膜症
- ・不整脈
- ・虚血性心疾患
- ・先天性心疾患
心臓の機能が低下すると、体に十分な血液を送り出せず、全体に負担をかけることになります。動脈硬化を原因とする場合もあれば、遺伝などを原因とする先天性の場合もあります。
2.心臓以外を原因とする場合:
- ・高血圧(断然多い)
- ・貧血
- ・甲状腺機能の異常(バセドウ病など)
- ・腎臓病
- ・過剰なアルコール摂取
- ・感染症
心臓以外にも、心不全を引き起こす原因は数多く存在します。生活習慣との関連性が深い高血圧には、特に注意が必要です。
当院の治療法
心不全とは長い時間をかけてだんだんと症状が進行していくものと比較的急性に起きるものがあります。慢性的なものは、「症状を完全に改善する」ことは難しく、「長い時間をかけて病気と向き合っていく」「症状の進行を抑え、より長く生きられるようにしていく」ことが治療のポイントとなります。
薬物療法と非薬物療法を組み合わせながら、患者さま一人ひとりに適した対応をしていきます。
1.薬物療法:
心不全の治療の中で重要な役割を持ちます。「心不全の症状を和らげ、生活の質(QOL)を上げる」「心不全の悪化を防ぎ、より長く生きられるようにする」ことが目的です。患者さまの状態によって判断し、適切な薬を処方する流れになります。
2.非薬物療法:
必要性が認められた場合、「手術療法」をおこないます。手術療法では「冠動脈バイパス手術」「弁形成・置換術」「ICD(植込み型除細動器)治療」など原因疾患と重症度により様々です。加えて日常生活に支障がない範囲での「運動療法」や、症状が非常に深刻な場合には「人工心臓植え込み」「心臓移植」が適しているケースもあります。
日常生活をより快適に、人生をより長く過ごすためには、早めの対応と適切な治療が不可欠です。少しでも異変を感じたら、できるだけすぐにご相談ください。